2液の可使時間(ポットライフ)と装置の段取りの関係

車載電装部品メーカーで20年ほど生産技術を担当していた三宅です。
基板のポッティングやケースの接着を、手作業から機械に切り替える仕事を何度も手がけてきました。

いまでも覚えているのは、昼休みが明けたらミキサーの中で樹脂が固まっていた日のことです。
ラインは止まり、午後の立ち上げは大きく遅れました。

2液の樹脂をディスペンサーで塗布する現場では、可使時間と段取りを切り離して考えることはできません。
装置メーカーもこの点を意識しています。
たとえばナカリキッドコントロールの2液型ディスペンサー(塗布装置)の製品一覧から各機種のページをたどると、ミキサーの種類や洗浄の要不要まで書かれています。

この記事では、可使時間と段取りの関係を現場の目線で整理します。

可使時間は「条件つき」の数字

可使時間(ポットライフ)は、主剤と硬化剤を混ぜてから、使える状態を保っている時間のことです。
求め方はJIS K 6870という規格に定められています。

セメダインの解説記事「接着剤カタログの読み方」では、可使時間は粘度や押出量、塗布のしやすさなどの変化で判断され、温度が高いほど短くなる傾向があると説明されています。

つまり、カタログにある「30分」は、決まった条件で測った値です。
夏場の工場や、一度に多く混ぜたときは、それより短くなると見ておくのが安全です。

段取りのどこで固まるのか

混ざった樹脂が装置の中で止まっている時間が、可使時間を超えると固まり始めます。
現場で起きやすいのは、次のような場面です。

  • 昼休みや交代の休憩
  • 品種切り替えで塗布を止めている間
  • 設備トラブルでラインが止まったとき
  • 終業時の片付け

吐出を止めても、ミキサーとノズルの中には混ざった樹脂が残っています。
この残りをどう処理するかが、段取りの中身そのものです。

止めたときの処理は大きく3通り

方法やること溶剤
使い捨てミキサーの交換固まったミキサーごと外して新品を付ける使わない
主剤での置換主剤を流してミキサー内の混合液を押し出す使わない
溶剤洗浄ミキサー内を溶剤で洗い流す使う

使い捨てミキサーについては、3Mの技術資料に、一度きりの使用が前提で、溶剤で洗って使い回さないよう書かれています。
休止明けは、固まった材料ごとノズルを外して捨てるのが基本です。

溶剤洗浄を選ぶ場合は、法令も関わってきます。
有機溶剤中毒予防規則では、有機溶剤を使った洗浄や拭き取りの作業が「有機溶剤業務」に含まれています。
換気や作業管理まで含めて考えると、溶剤を使わない方式を選ぶ理由は十分にあります。

装置選びの段階で可使時間を伝える

可使時間と段取りの問題は、装置を入れたあとより、選ぶ段階で片付けておくほうが楽です。
私が相談を受けたときは、まず使う樹脂の可使時間と、1日に何回ラインが止まるかを書き出してもらいます。

大阪で液体ディスペンサの開発と製造を手がけるナカリキッドコントロールは、この点の選択肢がそろっています。

  • 「ポットライフの短い樹脂にも対応」とうたうP-FLOW Tタイプ
  • 使い捨てのスタティックミキサーで洗浄が要らない構成
  • 溶剤を使わず主剤で置き換える置換式ミキサー(置換は通常7〜10ショット)

テストルームや商品選定の申し込みフォームには、ポットライフの記入欄があります。
自社の樹脂を持ち込んで実機で試せるので、段取りの手間まで確かめられます。
機種ごとの仕様は、冒頭で紹介した製品一覧のページで確認できます。

まとめ

  • 可使時間は温度や量で変わる、条件つきの数字
  • 段取りの課題は、止めている間にミキサーに残る樹脂の処理
  • 交換・置換・洗浄のどれを選ぶかで、手間も法令対応も変わる

ディスペンサーで塗布する工程を組むときは、樹脂の可使時間と、ラインが止まる場面をセットで考えてみてください。
導入前に一度テストしておくと、立ち上げ後に慌てずにすみます。